
遺伝子療法による脳疾患の治療が初めて効果を挙げました。この治験の成果は、権威ある学術誌『サイエンス』に発表され、フランスやアメリカで大きな反響を呼びました。この重要な科学的進歩は、昨年12月4日と5日にフランスで開催された「テレトン」でも大きく紹介されました。これは毎年、遺伝性疾患の研究への募金を目的に行われるチャリティーイベントです。
副腎白質ジストロフィー(ALD)は男児2万人に1人の割合で発病する恐ろしい遺伝性疾患で、最も深刻かつ頻繁に見られる症状として、神経の情報が伝達されるミエリン(髄鞘)の破壊があります。この病変は急速に生命機能に悪影響を及ぼし、患者の死亡にいたることもあります。パトリック・オブール教授はパリのサン=ヴァンサン=ド=ポール病院小児神経科でADL患者を診るなかで研究を始め、同僚のピエール・ブニェール、ネッケル小児病院の小児科医で免疫学の研究者であるクロード・グリセリやアラン・フィシェールとともに、診療用生化学マーカーの開発や同種骨髄移植による治療などに取り組みました。「この移植で脳障害の進行を阻止できますが、効果が現れるまでに術後数カ月かかります。さらに、移植は適合するドナーに依存するうえ、死亡率が高い合併症を引き起こしかねません」とオブール教授は強調します。
新しい治療法は、患者本人の骨髄細胞を遺伝子療法による治療を施した後に移植します。幹細胞を採取し、エイズウイルスから派生した治療用ベクターを用いて修正します。「これはエイズ研究から生まれた発見で、この病気の患者の治療に大きな結果をもたらす」とオブール教授はみています。幹細胞は処置後、再注入されます。注入された幹細胞は骨髄に達すると脳に向かい、脳内で矯正役として働きます。このプロセスは単純に見えますが、長年にわたる研究の成果なのです。治験は国立保健医学研究所(INSERM)、パリ首都圏医療センター(AP-HP)、パリ=デカルト医科大学で進められました。
クリストフ・ファン・カレのチーム(ドイツのハイデルベルクにあるドイツがん研究センター所属)が、修正された細胞の経過を革新的な方法で分析したことも決定的な要素でした。「我々は慎重の上にも慎重を期さなければなりませんが、この分析によってベクターの組み込みによる有害な影響が心配される理由は特にないことが明らかになりました」と治験全体を統括したINSERMのナタリー・カルティエ研究主任は説明しています。多数の検査後、2006年に2件の治験が当時7歳の男児2人に行われました。「最初の男児は3年以上、2人目の男児は2年半、憂慮すべき影響は確認されませんでした。3人目の患者も治験を受けましたが、結論を出すにはまだ早すぎます」
科学者は現在、骨髄幹細胞の約15%を修正できるようになりました。将来的には30%、さらに60%を修正可能にし、病気が進行する期間をいっそう短縮することを望んでいます。とはいえ研究者と患者は、治療が病気の進行を止められても、病状を回復させることはできない点を強調しています。そこで病気発生のリスクがある家族における早期発見が重要になります。アメリカでは新生児検診システムの導入に向けた法整備が進められています。
今日、ナタリー・カルティエとパトリック・オブールは、治験対象を国内外の他の患者にも広げることを検討しています。この大きな科学的進歩は、遺伝性の貧血病であるサラセミアや、ヘモグロビンの異常が原因の鎌状赤血球症といった他の病気の治療にも遺伝子治療用ベクターの使用を促し、新しい展望を開いています。こうした最先端治療の対象患者は、おそらく将来的に世界中で何百万人に達するでしょう。
Service d’Information et de Communication (1月21日)