パリ・マッチ誌によるファビウス外務・国際開発大臣インタビュー [fr]

 国連気候変動パリ会議(COP21)議長を務めるローラン・ファビウス外務・国際開発大臣は、フランスのパリ・マッチ誌「水」特集号に掲載されたインタビューで、水をめぐる死活的に重要な課題について語りました。

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2015年10月22日

 海洋はCOP21に欠落している大きなテーマの一つです。しかしながらその重要性は、人間にとって極めて根源的です。海洋は酸素の80%近くを生み出しているからです。なぜ海洋をもっと重要視しないのでしょうか?

 我々は12日間のパリ会議会期中の1日、12月4日を海洋問題に当てます。それぐらいは当然のことです。というのも、地球は森林と海洋の2つの肺を持っているからです。人間が大気中に排出するCO2の4分の1を吸収し、酸素を放出、すなわち気温を調節しています。気温上昇が続けば、海面上昇をはじめ、特に太平洋の島しょ部が水没の脅威にさらされるなど、複数の恐ろしい結果がもたらされます。海洋空間にも打撃が及び、食料安全保障に影響が出ます。海洋酸性化も忘れてはなりません。ですから、水はすべての中心です。我々は2つの面で行動しなければなりません。1つは温暖化を防止すること、これは海洋に直接的な効果を与えます。もう1つは気候変動の影響に適応する努力を増強することです。

 フランスは海洋面積1,100万平方キロメートルを誇る世界2位の海洋大国です。そこに利活用が不十分な成長の宝庫があるのではないでしょうか?

 ええ、いわゆる「ブルー成長」と呼ばれるものです。波力による海洋エネルギー、水産養殖、海洋観光、海洋鉱物資源、「ブルー・バイオテクノロジー」など、複数の分野にまたがります。グリーンエネルギーはよく話題に上りますが、ブルー成長部門も今後数年間に大きく発展する見込みです。フランスはこの部門で重要な切り札を持っています。

 アムステルダム大学の調査は、海洋保護区への投資が3倍の利益をもたらすことを示しています。この分野におけるフランスの目標は?

 2006年、フランスの海洋保護区は海洋面積全体の1%以下にすぎず、その主なものがポール=クロ国立公園、コルシカ島のスカンドラ自然保護区、ブルターニュ地方のセット=イル自然保護区でした。今日、海洋保護区は16%に増え、我々は2020年に20%をめざします。これは生物多様性条約で定められた国際目標の2倍に当たります。十分ではありませんが、ここ10年で大きく進歩しました。

 海洋に関連する条約が500近く存在しますが、それらを監督する世界的なガバナンスがありません。航空に関してはあります。海洋についても一つ設ける時期ではないでしょうか?

 ええ、まったく同感です。今日、海洋をめぐる権限が細分化されている一方、扱うべき問題が数多くあります。我々フランスは一貫性のある公海ガバナンスを求めます。国連は6月、海洋法に関するモンテゴ・ベイ条約を補完する新たな国際的合意に向けた交渉を発表しました。公海の海洋生物多様性の保護と持続可能な利用、海洋保護区の創設、バイオテクノロジー分野で大きな潜在力を秘める海洋遺伝資源の公平な配分など、これらを可能にするグローバル・ガバナンスを構築することが目標です。残念ながら、これには時間がかかります。交渉は2016年前半に始まりますが、諸問題の複雑性を考えれば、交渉を数年内にまとめることは恐らく無理でしょう。フランスはヨーロッパのパートナー諸国とともに、交渉妥結に向けて全力を注ぎます。

 地球上の飲料水の60%が10カ国に集中する一方、10億人が水への直接的なアクセスがありません。そこに来るべき数多くの紛争の争点があるのでは?

 水戦争の可能性すら語られています。今日、世界人口の5分の1近くが水の希少性に構造的にさらされている区域に暮らします。水は気候変動の影響によって最初に打撃を受ける部門で、このことが「水ストレス」を増大しています。最悪のシナリオでは、2050年に1人当たりの利用可能な水量が半減し、極端な干ばつが ― 今日は総面積の1% ― 今世紀末には3分の1近くに及びます。言葉を換えれば、水需要が2050年に供給を40%上回ることになります。降雨量の減少はすでにサヘル、地中海、南部アフリカ、南アジア、中国で観測され、食料生産に直接的な脅威を与えています。というのも世界の水使用量の70%が農業生産に使用されているからです。それゆえに至急行動しなければなりません。何よりもまずCO2排出量を削減することです。温暖化の抑制は水資源の利用可能量にプラス効果をもたらすからです。次に具体的な適応措置を導入することです。下水処理装置の効率を向上させるほか、水使用量がより少ない新しい農業技術を開発しなければなりません。フランスの企業や研究者は、これらの分野で極めて高い能力を備えています。

 2050年、海面上昇が原因で2億5,000万人が環境難民になると予想されます。現在の難民問題を見れば、それがどういうことになるか想像できます。未来の大量人口移動にあらかじめ備えるため、何ができるでしょうか?

 ヨーロッパが今日直面している移民は数十万人です。これがもし何千万人、何億人だとしたら、その影響の甚大さを想像してください。この問題に取り組む国が4年前、「ナンセン・イニシアティブ」を立ち上げました。フランスも参加しています。このグループの会合が今月ジュネーヴで開かれ、これら将来の移民に関する共通原則憲章に到達することをめざします。地球温暖化は環境のみならず、食料安全保障、保健、移民、つまるところ平和と戦争に現在そして将来的に影響を与えます。私がこの問題は文字どおり死活問題だと、事あるごとに強調する理由もそこにあります。

 まさにシリア紛争の種は、2007年から2010年まで続いた干ばつの時に芽を出したとする人たちがいます。疲弊した農民が都市に移住し、その都市部で貧困と国の怠慢が原因でデモが発生し、それを弾圧するという負の連鎖を今日目の当たりにしていると言うのです。どう思われますか?

 第一義的責任がバッシャール・アル=アサドにあることが明らかだとしても、シリアの悲劇の原因は多種多様です。忘れられがちですが、最初はシリアの一角で数人の若者が起こした、ごく限定的な暴動でした。それがバッシャールによってあのように扱われた結果、死者が今日25万人に上っています。2010年の干ばつが緊張を激化させたのも確かでしょう。この例は気候変動が環境問題だけを招くわけではないことを顕著に示しています。危険にさらされているのは地球の命です。我々の生命であり、種の生命です。我々は際立った結果なしに先送りできる他の交渉のような外交交渉に臨んでいるのではありません。全世界的な時間との競争です。先送りは手遅れになります。温室効果ガスは一度排出されると大気中に数十年間、時には数世紀にわたって残存するからです。パリ会議は地球にとって転機となり得るし、そうしなければなりません。

 地球上の指導者たちは今回、課題を完全に理解していると思いますか?

 ええ、特に中国の約束とアメリカ大統領自らの取り組みなど、極めて明確な形でそれを確認しています。両国は過去において、気候問題に対してはるかに消極的でした。一般に状況は残念ながら悪化し、科学者の傑出した仕事のおかげで、だれ一人見て見ぬ振りはできなくなりました。「気候変動懐疑論」も弁護の余地がなくなりました。とはいえ、各国を拘束する問題に関する普遍的な合意を採択するよう196カ国を説得する必要があります。ですから任務は極めて複雑です。

 196カ国を結集できなければ、世界の温室効果ガス排出量の60%を占めるアメリカ、中国、ヨーロッパ連合(EU)の間で合意を結ぶことはできませんか?

 国連の潘基文事務総長は地球温暖化について毅然とした表現を使っています。「代替案はありません、代替の地球がないからです」。気候交渉ルールは単純です。すべての国の署名がなければ、合意は成立しません。世界の2大排出国であるアメリカと中国は参加しなければなりませんが、そのほかの国の動員も不可欠です。例えば、インドや石油産出国は極めて重要なアクターです。これらの国は「脱炭素」エネルギーの拡大が求められていますが、20世紀初頭からハイドロカーボン(炭化水素)が成長の基盤です。その上、温室効果ガスは物理的に国境で止まることはありません。ですから全世界的な努力が必要なのです。一部の国の合意では効果がありません。

 大臣が2014年7月、ヨーロッパ最北端の地、ノルウェー領スヴァールバル諸島の氷河融解を視察した際、我々も同行取材しました。最近の変化について何か情報はありますか?

 あの時点以来、この現象の規模は残念ながら予想されたよりもはるかに拡大しました。これらの地域では、温暖化の影響がよそに比べて2倍になります。その直接的な影響が地球の残りの地域に及んでいます。氷河融解は海面上昇の大きな原因となるからです。

 大臣は当時、「この氷河問題を500日間で広く知らせる」と発言されていました。この使命を果たしたという認識をお持ちですか?

 私はまだマラソン交渉を続けています。一部の同僚は私を気候の「マラソン交渉ランナー」と称しているほどです。我々は数日前、フランスの大統領、中国の主席、インドの首相、マイケル・ブルームバーグのほか、大勢の要人とこれらの問題を国連で協議しました。当事者意識は浸透していますが、さらなる拡大が必要です。悲惨な将来観を与えることなく、実施すべき行動の緊急性を説明することに難しさがあります。気候変動対策は拘束だけでなく、好機の源でもあります。グリーン社会への移行は技術変革を伴い、成長と雇用の機会を増やすからです。

 合意に達する見込みについて、どのような認識をお持ちですか?

 私はレオン・ブルムの言葉をよく引用します。「そうなると思います、そう願っていますから」。普遍的に適用可能な合意に達すれば、前人未到の成果となります。気候交渉史上、一度も達成されたことはありませんから。とはいえ、十分に野心的な合意である必要があります。世界の温室効果ガス排出量の87%以上を占める約150カ国が約束草案を提出しました。一方、京都議定書の対象は15%にすぎません。目覚しい進歩です。正念場は、2100年までの気温上昇1.5度または2度以内を順守することです。もし署名された合意が十分に野心的な内容でなければ…。

 失敗とみなされる…。

 我々には失敗は許されません。概して、成功とみなされた会議はめったにありません。そういえば面白いエピソードがあります。フランスが3年前、ワルシャワでCOP21開催国に指名されたとき、世界各国の代表が私の方に来て、含みのある笑顔で「ファビウスさん…、頑張ってください!」と異口同音に告げました。なぜ我々は立候補したのか?パリ会議の課題が人類の未来にとって死活問題であり、我々が責任を持って行動しなければならなかったからです。

 大臣は全員が当事者意識を持つべきだと述べられました。それはむしろ大国間、利益団体と多国籍企業の間の問題では?

 いいえ、気候変動対策はみんなの問題です。各国政府の取り組みは極めて重要ですが、市、地方、企業などの非国家アクターの取り組みも必要です。これらのアクターの明確な取り組みをパリで集めて、いわゆる「行動のためのアジェンダ」としてまとめます。企業側には極めて顕著な進展がみられます。道徳意識の向上だけでなく、多くの企業が気候変動問題を経営戦略に組み込まなければ、遅れをとるリスクがあることを理解しています。スタンダード&プアーズは今では、企業の格付けに対象企業の気候変動対策に対する決定 ― または未決定 ― を組み込んでいます。ノルウェーの世界最大の政府系ファンドが化石エネルギーの中で最も汚染度の高い石炭から手を引くことを決めました。ユニリーバ最高経営責任者のポール・ポルマンはこの問題に積極的に取り組んでいますし、ビル・ゲイツもこれらの分野で技術イノベーションを促進するため、重要なイニシアティブを検討しています。彼にとって、技術的ブレークスルーを促進する以外に、我々が気候変動の課題に立ち向かうことはできないからです。それには大規模な投資が必要で、彼は友人の一部と資金面で貢献したいと考えています。企業のほかにも、地方自治体、市民団体、宗教的・道徳的権威による気候変動対策への取り組みが増えていることも事実です。このように事態はポジティブな方向に進んでいますが、最終的に確定したものは何もありません。私は楽観的ですが、積極的な楽観主義者です。我々は最終日まで努力を続け、意思結集を図ります。そうすれば我々皆が願う成功が12月11日、パリで現実になるでしょう。

【インタビュアー】 ロマン・クレルジャ、フランソワ・ド・ラバール

最終更新日 28/10/2015

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