日仏の次世代研究者に示唆を与えたノーベル賞受賞者フランソワーズ・バレ=シヌシ博士 [fr]
ヒト免疫不全ウィルス(HIV)の発見で2008年にノーベル医学・生理学賞を受賞したフランス人研究者のフランソワーズ・バレ=シヌシ教授が11月7日から9日まで、ノーべル・プライズ・インスピレーション・イニシアティブの一環として来日しました。
このプログラムは製薬企業のアストロゼネカ社の支援を得て、学生や若手研究者に科学者という職業を紹介することを目的としています。バレ=シヌシ博士は本プログラムにおいて、東京大学と京都大学で若手研究者を前に講演を行ったほか、11月7日にはフランス大使館で東京国際フランス学園の生徒と交流しました。
1983年にHIVを発見後、今も感染者数が3,700万人近くに上るこの疾病と闘い続けるバレ=シヌシ博士は、若者に科学者という職業を紹介する啓発活動や、科学界における女性の地位向上を促進する活動にも熱心に取り組んでいます。
パスツール研究所に所属するバレ=シヌシ博士は、科学分野でノーベル賞を受賞した数少ない女性の一人です。この最も権威ある賞を受賞したフランス人女性は、1903年にノーベル物理学賞を、続いて1911年にノーベル化学賞を受賞したマリー・キュリーと、1935年にノーベル化学賞を受賞したイレーヌ・ジョリオ=キュリーの2人のみです。日本では2015年に女性が研究者のポストに占める割合は14.7%、大学教授のポストは23.2%にとどまりました。
バレ=シヌシ教授は東京大学と京都大学で行った講演で、研究開始当初の数年間とHIVの発見を振り返り、現在および未来の治療の発展に不可欠である基礎研究の重要性について強調しました。さらにHIVに関する研究の針路を決定づけた1981年の学術会合を例に挙げながら、科学界に根強く残る定説と闘うよう学生たちを激励しました。
これらの講演に先立って、在日フランス大使館で東京国際フランス学園の理系生徒約50人と交流し、豊富なエピソードや個人的な体験談を交えながら、これまで歩んできた道のりを語りました。彼女を突き動かす原動力として、何よりもまず患者との触れ合い、研究に対する情熱、人の役に立つ必要性を挙げました。
バレ=シヌシ教授はHIVとの闘いは終わっていないことや ウイルスのまん延を防ぐ最大の武器は今でも予防であることにあらためて触れながら、その他の感染症の出現が示すリスクの増大も取り上げました。
今回の訪問は、若手研究者の研究活動や理系生徒の進路選択に示唆を与えたに違いありません。