仏独外相論考「不確実な世界における強いヨーロッパ」 [fr]

ジャン=マルク・エロー外務・国際開発大臣とドイツのフランク=ヴァルター・シュタインマイヤー外務大臣の論考

 イギリス国民の決定はヨーロッパの歴史に一転機を画します。ヨーロッパ連合(EU)は一つの加盟国だけでなく、過去数十年にわたり共に歩んだ歴史、伝統、経験の一部も失います。フランスとドイツはこの決定を遺憾ながら事実として認めます。この新しい情勢はイギリスにも、EUにも結果をもたらします。リスボン条約は一加盟国の秩序立った離脱を確実に遂行するための手続きを規定しています(50条)。イギリス政府がこれらの手続きを始動したとき、我々は将来のEUとイギリスの関係の明確化をめざす交渉において、EU諸機関を補佐する用意があります。

 イギリスは例外的な事例です。しかしながら、共通のプロジェクトへの支持が過去十年間に、我々の社会の一部において弱まったことも認める必要があります。単により一層のヨーロッパを訴える呼びかけや、熟考を重ねる段階だけにとどめることはできません。我々はヨーロッパ・プロジェクトに忍び寄る衰退を回避するため、本質的な課題や市民の具体的な期待に応える取り組みへと軌道を修正しなければなりません。我々は市民がEUの存在を再び問題視するつもりはなく、むしろその機能のあり方に不満を表明しているのだと確信しています。我々には二重の任務があります。ヨーロッパレベルでのみ対処可能な課題に共通の努力を集中させ、約束を果たすと同時に、ほかの課題については国や地方に任せるということです。

 フランスとドイツは、ヨーロッパ連合がヨーロッパの自由、繁栄、安全を保障し、EU諸国民間の平和的で互恵的な関係を定め、世界の平和と安定に貢献するために不可欠な唯一無二の枠組みであると断固として確信します。我々両国は、両国民間の常により緊密なつながりの基礎を成す同じ将来像と共通の価値観を共有しています。それゆえに我々はヨーロッパの政治同盟に向けて前進を続けるとともに、ほかのヨーロッパ人もこの努力において我々と力を合わせるよう促します。

 フランスとドイツは、ヨーロッパ連合の団結とEU域内の連帯を強化する責任が両国にあることを認識しています。そのために、我々は各加盟国がヨーロッパ統合について、さまざまな野心を持ち得ることを認めなければなりません。我々はすでに成し遂げられたことを見失うことなく、ヨーロッパがすべてのヨーロッパ市民の期待によりよく応えるようにするため、これらさまざまな野心レベルをよりよく考慮に入れる方法を見いださなければなりません。

 我々はEUが域内外で今日生じている課題に対し、共通の解決策を策定できると確信しています。激変する国際情勢においてヨーロッパ連合はこれまで以上に必要であるとともに、集団的な解決策をもたらすことができる唯一の枠組みです。フランスとドイツは、ヨーロッパが世界レベルでより一層の一貫性を確保し、ますます立場を明確化するために行動します。ヨーロッパは約束をよりよく遂行するため、その行動を今日の主要課題に集中させ続けなければなりません。主要課題とは、域内外の脅威の深刻化に対してEU市民の安全を確保すること、移民および難民流入の問題に対処するために安定した協力の枠組みを設置すること、収斂や雇用創出型の持続的な経済成長を促進すると同時に、経済通貨統合の完成に向けて前進を遂げながら、ヨーロッパ経済を活性化することです。

 ヨーロッパ連合は厳しい試練に立たされています。南側と東側の近隣地域における一連の危機に直面する一方で、経済成長への道をゆっくりと再び歩み始めています。我々はヨーロッパ建設の歴史を心にとどめているからこそ、EUの力に、このような状況を克服する能力に全幅の信頼を置いています。とはいえ、この危機的な時期に新しい要素が浮かび上がっています。これらの危機が、連綿と続く我々の社会や価値観、生活様式などを脅かすという認識です。テロリストが我々の社会に恐怖と分断の種をまこうとしています。我々はますます複雑に絡み合う域内外の困難に立ち向かわなければなりません。我々は域内においても、域外の世界に対しても、我々共通の価値観を守りながら、ヨーロッパ・モデルの中心である成長、競争力、社会的団結の組み合わせを堅持しなければなりません。

 我々はこれら複雑な問題に対して型どおりの解決策がないことを知っています。しかし我々は、長期的な課題に集中する一方で、現下の課題に対応しながら、これらの問題を解決する決意です。このような考え方から、我々は以下の提案について一致しています。

ヨーロッパ安全保障条約

 ヨーロッパ連合は先例のない脅威レベルと、悪化した戦略環境に立ち向かわなければなりません。域外の危機がより増加し、ヨーロッパにより近い地域(特に境界線の東部と南部)で発生し、ヨーロッパの領土やEU加盟国籍者の安全に即時に影響を及ぼしています。世界の舞台は再び力の政治の舞台となり、紛争が我々の大陸に持ち込まれています。危機地帯や不安定な地域を根城とするヨーロッパ内外のネットワークが、テロの脅威をますます増長しています。ヨーロッパの役割は、信頼できる平和の力として、かつてないほど重要です。

 EU加盟国間の相互依存は、安全保障分野にまで広がっています。これらの脅威が今や大陸全体に及んでいるからです。一つの加盟国を狙った脅威は、ほかのすべての加盟国にとっても脅威です。それゆえに我々はEUの安全保障を一体かつ不可分とみなします。EUとヨーロッパの安全保障秩序は、我々の極めて重要な利益の一部であり、いかなる場合においても守ります。

 こうした背景のもと、フランスとドイツは共通防衛安全保障政策の達成をめざし、加盟国間の連帯と相互支援に基づく安全保障同盟のための積極的な関与を重ねて表明します。ヨーロッパのために安全を保障すること、世界の平和と安定に貢献することは、ヨーロッパ・プロジェクトの核心です。

 我々はヨーロッパ連合を周辺地域の鍵を握る勢力として、しかし同時にグローバルな課題に対して決定的な答えをもたらすとともに、ルール、戦略的安定性、平和的な利益均衡に基づく国際秩序を支えることができる世界規模の平和の力として考えています。我々は広く認められるべき、我々の行動を決定し得る著しい成功を挙げています。イラン核計画に関する歴史的な合意は、EUの断固とした不断の取り組みがなければ不可能でした。ミンスク・プロセスにおけるヨーロッパの取り組みは、ウクライナ東部で制御不能な対立激化に陥りかねなかった軍事衝突を抑えることに貢献しました。我々の外交努力は紛争の政治的解決への道を開き、我々は今も努力を続けています。リビアでは、地中海南岸地域の脆弱性と政治的不安定性に関連したリスクに立ち向かう意思とともに、国民和解政府を支持しています。危機管理のほかにも、大きな課題と多大な好機が生じるアフリカのために持続的な取り組みが必要です。

 対外的な安全保障と対内的な安全保障の相互依存は、現下の安全保障環境の主要な特徴の一つです。最も危険で安定を損なうリスクは、外部の脅威と内部の脆弱性の相互作用から生じます。ドイツとフランスはこの課題に対処するために、ヨーロッパ・レベルで扱われる安全保障と防衛のすべての側面を包括し、ヨーロッパ連合によるEU加盟国籍者の安全強化に関する約束を具体化するヨーロッパ安全保障条約を提案します。

 第1段階は戦略環境の共同分析と利益の共通理解を共有することです。フランスとドイツはEUが戦略環境を定期的に調査し、外務理事会とヨーロッパ理事会での議論に委ねるよう提案します。これらの調査は、EU情勢・情報センターと外部専門機関を基盤とする独立した情勢評価能力に基づくとともに、ヨーロッパ・レベルで承認された、情報に関する戦略的分析を伴います。

 この共通理解に基づいて、EUはヨーロッパの利益に応じた外交・安全保障政策の戦略的・集中的な最優先事項を定めなければなりません。

 EU包括戦略はこの道における第一歩です。しかし我々はさらに前進しなければなりません。より競い合い、より競争が激しい国際舞台において、フランスとドイツはEU加盟国籍者の利益を保護し、促進するため、その専門能力と文民的もしくは軍事的な手段を総動員できる独立した世界的アクターとして、ヨーロッパ連合を強化するよう努めます。フランスとドイツはヨーロッパの全手段を収斂させながら、ヨーロッパ連合の統合された外交・安全保障政策を促進します。

 ヨーロッパ連合は自らの安全保障に直接的な影響を及ぼす危機を管理するため、より頻繁に介入すべきです。従って我々はより強化された、より柔軟な予防能力と危機管理能力を必要とします。EUは常設の民軍指揮系統に基づいて、軍事作戦と文民活動をより効果的に立案し、指揮できなければなりません。EUは実戦即応部隊を頼りにできるようにすべきであると同時に、作戦の共同出資を拡大すべきです。EUの枠内で、防衛に関する常設の協力体制を構築したい、あるいは作戦を開始するために積極的に行動したいとする加盟国が柔軟に取り組めるようにすべきです。EU加盟国は必要な場合に、常設海軍部隊の創設や、その他の基幹部門でEU独自の能力の獲得を検討できなければなりません。

 これらの努力と並行して、EUはヨーロッパの安全保障に課せられた諸課題に連携して一貫性のある対応をとるため、北大西洋条約機構(NATO)との協力を深化しなければなりません。

 ヨーロッパ人は課題に対処できるように、防衛努力を強化しなければなりません。加盟国は防衛予算と装備取得および研究・技術(R&T)の費用分担に関する集団的な約束を再確認し、順守しなければなりません。フランスとドイツはヨーロッパ連合に、防衛能力のためのヨーロピアン・セメスターを創設するよう提案します。この枠組みにおいて、EUは防衛計画策定と能力強化の両プロセスの一貫性を確保しながら、加盟国が展開する努力を支援します。EUは各加盟国が自国の軍事支出計画の最優先事項を検討するよう促します。ヨーロッパ防衛関連研究計画の創設は、ヨーロッパの革新的な産業を支えることになります。

 ヨーロッパ連合は紛争予防と、近隣地域や危機により打撃を受けた諸地域の安定化に一段と力を注がなければなりません。EUは各国の危機耐性と、浮上する危機やテロの脅威を予防・制御する能力を強化するため、近隣諸国とパートナー諸国が統治の能力と構造を向上させるのを援助しなければなりません。フランスとドイツは状況が許したとき、とりわけシリアとイラクで安定化、開発、復興に関する共同イニシアティブを推し進めます。フランスとドイツは手を携えて、文民危機管理メカニズムを強化するとともに、紛争解決の政治的プロセスを支援し、強化すると決めた両国の約束を再確認します。

 対内的な安全を確保するための当面の課題は、何よりもまず実用面にあります。目標はEUの諸決定のフォローアップを確実に実行し、既存の枠組みを最大限に活用することです。例えば、乗客予約記録(PNR)、ヨーロッパ警察機関(ユーロポール)とヨーロッパテロ対策センターの最良の利用、テロ資金対策、武器・爆発物不正取引防止に関するEU行動計画などが挙げられます。重点は交通機関の安全強化に置かれるべきです。我々は北アフリカ、サハラ地域、チャド湖流域、西アフリカ、ソマリ半島、中東のEU域外諸国、ならびに地域機関や準地域機関(アフリカ連合、G5)との対話と協力を強化することも望んでいます。

 フランスとドイツはテロの根源的な原因を取り扱うため、過激化の予防と対策に関する経験とグッドプラクティス事例を共有・交換するヨーロッパ・プラットフォームを設置します。

 中期的には、EU域内安全保障のより統合されたアプローチのために尽力しなければなりません。その基盤となるのが、各国の特権を全面的に尊重し、既存の枠組み(特にテロ対策グループ)を活用したヨーロッパ情報収集協力プラットフォームの創設、情報交換の強化、複数のEU加盟国に及ぶ重大危機に備えたヨーロッパ計画の策定、ヨーロッパ即応能力の創設とヨーロッパ市民保護部隊の設置などの措置です。

 長期的には、テロや組織犯罪と闘うため、次期EUパッケージ(現在はEUの財政的利益に関連する犯罪の訴追に限定)の適用範囲を広げることが適切です。それには加盟国の刑法の調和化が必要となります。

 フランスとドイツはこの努力を推し進めるため、ヨーロッパ理事会がEUの対内的・対外的安全保障および防衛の諸問題を取り扱うため、ヨーロッパ安全保障理事会の形で年1回会合を開催するよう提案します。このヨーロッパ安全保障会議の準備作業は、外務・防衛・内務閣僚級会合で行います。

EU庇護・移民共通政策

 ヨーロッパに向かう移民は、EUの将来にとって重要な課題です。

 21世紀のヨーロッパの課題である移民問題に対し、一方的な国の対応はあり得ません。市民はヨーロッパの価値観を守りながら、対外国境管理を再開することを望んでいます。我々はこの要求に応えるために協力して行動しなければなりません。ドイツとフランスは、庇護、難民、移民に関するヨーロッパ統合警察の設置に今こそ尽力すべきときだと確信しています。我々は問題の緊急性にかんがみて、責任に対する同じビジョンを共有する加盟国グループが共通政策に積極的に取り組むという考えも除外しません。

 対外国境の安全を保障することは、もはや国の務めだけではなく、共通の責任に属します。我々はEUが最初の多国籍国境沿岸警備隊を設立するようにする決意です。短期的には、ヨーロッパ対外国境管理協力機関(FRONTEX)に加盟各国から職員が派遣されます。中期的には、FRONTEXは独自の常勤職員や、任務遂行を可能にする適切な装備によって強化されます。

 我々はEU域外のビザ免除国からの入国者に対し、ヨーロッパ電子渡航認証システム(ESTA)の導入も提案します。我々の国境と安全を強化する貴重な手段となります。

 戦争や政治的迫害から逃れる人を保護することは、我々の共通の義務です。我々は難民が出身国からできるだけ近くで受け入れられるように努力します。

 ヨーロッパにたどり着いた庇護申請者は、我々の海岸のどこに到着しようと、ジュネーヴ条約に従って処遇される権利があります。そのために我々は、一部の分野における規範と手続きの調和化と簡素化を続けなければなりません。我々は必要なところに効率的な庇護システムを設置するために、いつでもEUの支援をもたらせるようにしなければなりません。中期的には、ヨーロッパ庇護支援事務所がヨーロッパ庇護機関へと移行し、この正常化プロセスを支えるとともに、規範と多数の記録との不一致に起因する弊害を回避することで、二次的な移動を思いとどまらせるため、共同データベースを設置します。このヨーロッパ庇護機関は、最初に入国したEU加盟国が庇護申請を処理する責任を有するなどのダブリン基本原則を順守しながら、国際的保護の申請の評価に関する収斂を強化することに貢献します。

 ヨーロッパ連合では、連帯が共通プロジェクトの基礎です。市民はEU帰属に由来する利点と責任が加盟国間で公平に分配されることを期待しています。一部の限られた国が移民の負担を負うのは耐え難い状況です。第1段階として、ダブリン・システムは例外的な状況に対処するため、全加盟国間の努力の分配を規定する、拘束力を有する常設的メカニズムを通して改善されなければなりません。ドイツとフランスは必要であれば、同じ考え方の加盟国グループとともに、この問題について積極的に行動する用意があります。

 EUは経済的理由でEUにたどり着こうとする移民の増加に対する共通の答えを見いださなければなりません。庇護システムは移民にとって幻想を抱かせる入国地点です。ヨーロッパは移民や移動性が経済、文化、社会の多様性にもたらし得る貢献に対して開かれた姿勢を維持すべきです。我々はEU加盟各国の労働市場のさまざまな情勢を考慮に入れながら、ヨーロッパで働くための既存の合法的な方法を明確に示す、EU移民法に向けて取り組まなければなりません。それと同時に、我々はEUへの不法入域者の送還費用を調達するためのヨーロッパの資金動員も含めて、送還政策に関するEUの手段と支援を改善しなければなりません。

 我々は移民の出身国および通過国との関係において、とりわけ若者を対象とした経済的・社会的機会を創出しながら、不法移民を促す要素を減少させるよう尽力します。我々は送還・再入国、国境の管理・監督、密入国業者ネットワーク対策など、極めて重要な分野における建設的な協力に期待します。ドイツとフランスはEUを代表して、アフリカの一部の国と移民に関するハイレベル対話をすでに開始し、その他の国へと対話を拡大する予定です。EUは貧困や安全の欠如、政治的不安定といった根本的な原因にも取り組まなければなりません。

 難民や移民を場合によって受け入れ、統合することは、責任と連帯の精神に基づいて取り組むべき課題です。ドイツとフランスは、移民と統合に関する同じ歴史的経験を共有していませんが、お互いに学ぶ決意です。我々は対話、交流、協力を通して、移民と統合が我々の社会に提示する課題と機会をめぐって、より客観的な議論を促進することを望みます。これらの教訓は、同様の課題に直面する他のEU諸国にも恩恵をもたらすことができます。

成長の促進と経済通貨統合の完成

 我々の単一通貨は今日でも、ヨーロッパ統合から生まれた最も目に見える形の、最も野心的な企てです。ユーロはユーロ圏諸国が国際的投機によりよく備えることを可能にした上、共通経済圏の構築に貢献しました。ユーロは不可逆的な統合プロセスへの我々の取り組みを反映しています。

 とはいえ、危機とその影響が不備を明らかにし、それにより市民が単一通貨の将来的可能性とこのプロジェクトの持続性に疑問を抱いていることを、我々は認める必要があります。我々が次の3つの面で同時に行動を進めようとする理由もそこにあります。1つ目は経済的収斂を強化すること、2つ目は社会正義と民主主義的責任を拡張すること、3つ目はユーロの不可逆性を守るために、ショックに対する耐久力を高めることです。こうした観点から、フランスとドイツはますます競争が激化する世界でそのモデルを明示できる、堅固なユーロ圏を構築することが両国の責任であると常に考えてきました。

 我々は議論を前進させるために、この精神を再活性化させることが急務であると確信しています。2国間レベルで一層取り組みを進めることは仏独両国の責任です。我々は単一通貨の導入条件と予算に及ぼす影響が、ユーロ創設時に予想されていたよりも重大なことが明らかになったことを認めなければなりません。それゆえに我々は、非ユーロ圏加盟国に同圏への参加時期の決定を委ねます。

 ユーロ圏は危機を克服するため、経済収斂の新しい段階に乗り出すべきです。フランスとドイツは、義務と連帯のバランスに基づいた、経済収斂と政治ガバナンスのプロセス構築の主要な責任を担っています。一方的な一本化は政治的に実現不可能なので、黒字国も赤字国も一層の収斂のために行動しなければなりません。

 潜在成長力は危機により大きく妨げられました。ヨーロッパは戦略的な特定分野で、単一市場の完成により成長の宝庫を可及的速やかに解放しなければなりません。フランスとドイツは規制、監視、法人税制を迅速に調和化するための2国間イニシアティブに引き続き取り組んでいます。官民投資を増大させる新たな努力が、成長の解放とヨーロッパ経済の生産性向上のために必要です。フランスとドイツは外国投資誘致と、両国の競争力強化を目的とする構造改革に取り組んでいます。

 こうした観点から、エネルギーやデジタル、研究・イノベーション、職業教育などの戦略的分野で、EU加盟国の成長と収斂を促進するため、的確なイニシアティブを始動しなければなりません。短期的には、規制目標やヨーロッパ戦略投資基金の拡大に基づく投資能力と関連させた、共通目標を設定することが可能です。中期的には、越境投資によって収斂を促進するため、これらの戦略的分野は共通規制枠組み、ひいては共同監督当局に向けて歩むと同時に、構造化されたヨーロッパ投資能力に支えられなければなりません。フランスとドイツの2国間イニシアティブは、こうした枠組みの一環を成すべきです。ユーロの現行制度は外的ショックや内的不均衡への耐性が十分ではありません。未完成の経済通貨同盟(EMU)は我々の共通通貨の長期存続を脅かします。EMUの完成には、政治ガバナンスの絶え間ない強化と財政負担の分担が必要です。既存の不均衡のため、EMUの深化は一朝一夕では実現しませんが、成長と雇用の面で必要な成果を考慮に入れる、実際的で段階的なプロセスを経れば可能です。これらの進歩は、EU加盟国と市民のEUに対する信頼を強化するとともに、EMUの実現に向けた新たな統合のステップに適した政治的条件を整えるために不可欠です。

 我々はEMUの加盟国がさまざまな伝統的な経済政策を進めることを認めなければなりません。これらの政策は、ユーロが良好に機能するようにバランスのとれたものでなければなりません。ユーロの将来的な制度はルールだけに基づくものでもなければ、単に政治的意思決定を下すものでもなく、市場の力学だけに統治されるものでもありません。EMUの深化は各段階において、これらすべてを包括します。

 EMUの経済政策はますます共同決定の成果であることから、市民は当然のこととして、彼らに報告を行う超国家機構を通して監視権を取り戻すことを期待しています。短期的には、ユーログループの常任議長がヨーロッパ議会ユーロ圏小委員会に報告を行うべきです。より長期的には、ヨーロッパ議会議員と国会議員が参加する機関に対し、ユーログループとその議長が責任を負わなければなりません。この議院は予算とマクロ経済の監視問題に関する全権を有することになります。

 こうした背景のもと、我々はヨーロッパ安定メカニズム(ESM)が議会の監督下に置かれる、正式なヨーロッパ通貨基金となるように、ESMを発展させなければなりません。

 ユーロ圏レベルの財政能力(世界中の成功した通貨同盟に共通する特徴)は、EMUの構造に常に欠けていた要です。長期的には、この能力によって、恒常的な一方向の移転を回避しながら、ユーロ圏のマクロ経済を安定化させることができるに違いありません。財政能力は時間をかけて、財政・経済政策に関する共同意思決定で遂げられた進歩に合わせて構築されます。危機によって最も大きな打撃を受けた加盟国への投資を支えるため、その導入は遅くとも2018年に開始されるべきです。フランスとドイツは、これらの問題への道を切り開く用意のあるグループを形成しなければなりません。

 ユーロ圏への参加は、ユーロ圏加盟国間の社会的・財政的公正に関する前進の欠如によって脅かされています。それゆえにEMUの深化を目的としたイニシアティブは、一般的に、とりわけ超国家企業への課税のための共通税制に向けた、さらに最低限の共通社会規範に基づく社会同盟に向けた進歩を伴わなければなりません。

最終更新日 26/08/2016

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