新大使館建築プロジェクト [fr]

ピエール=ミシェル・デルプシュ、ドミニック・シャヴァンヌ

 新大使館の建築では、大使公邸を保存することが決定された。公邸は南向きの展望が広がる敷地北側の高台に位置し、そこから明治通りまで森林庭園を眼下に臨み、最も立地に恵まれている。建設予定地の図面には、森林部の大部分が保護され、大使館のプールが中央にあった。新庁舎と高級マンションの建設予定地はブーメラン状の区画で、細い道路に面した敷地西側(ベルモン設計の旧庁舎および別棟がある場所)と、テニスコートと職員住宅がある敷地南側(明治通り沿いの集合住宅インペリアル広尾の北側)で構成される。

 2つの配置案が考えられた。MiNTAKにとって、道路沿いの住宅街に面した西側に高級住宅を配置し、新庁舎には内向型コンセプトを採用して庭園内に配置する案がより適切であるように思えた。

 この案には2つの制約がある。

  1. 道路に面した入り口から奥行きが極めて深く、幅が狭いうえに、庭園の地形により土地の形状が不規則である
  2. 南側にインペリアル広尾があるので、建物の向きが北側に限定される

 実用的な観点からみると、この配置案によって大使館の活動の連続性が維持できる。

 このプロジェクトは、優れているが制約のある建設予定地におけて最適な配置を追求した結果である。大使館新庁舎は庭園下方の帯状土地に伸びるような形状で、集合住宅の後ろ側壁面で南側全面がふさがれるうえ、西側の道路に面した狭い入り口が唯一のアクセスとなる。

 こうした立地条件から、完全に無機質で開口部が少ない南側ファサードと、全面ガラス張りの北側ファサードを特徴とする、折れ曲がった形状の直線的な建物が生まれた。少し湾曲してずれた2つの棟で構成される北側ファサードは、「庭園に面した巨大な開き窓」に似ている。

 このプロジェクトは、現代アートのインスタレーションのように構想された。無論、持続可能なインスタレーションであり、各機能は空間において最も合理的かつ快適な位置に配置され、建築要素(壁、廊下、階段)は仕事にゆとりを与える空間づくりに貢献する相互連関的な基本要素として選択された。

 道路から職場空間にいたる長い行程は、極めて特色ある対照的な空間が小気味よく連続している。

 玄関の大きな水平の屋根は大使館の入り口を明示し、道路に面した唯一のファサードを形成する。その下にはビザセクションと、人や車両の出入りをチェックする警備ポストがある。屋根の下面は折り紙から想を得た四面構成となっている。これに新庁舎の角部にある賓客用車寄せの天井が呼応する。

 そこから庭園の大きな樹木の陰になった「緑の壁」に沿って、木製の長い緩やかなスロープを上ると受付ホールに達する。

 ホールは大使館の中心を成す。4階まで吹き抜けのアトリウムは、空から光が降り注ぐようだ。アトリウムの焦点には、黄色い彩色ガラスの背景から浮き立つ受付カウンターがある。これには伝統と現代性を調和させるフランス流の生き方が反映されている。

 アトリウムの北側には、天井までガラス張りの開口部があり、樹齢100年を超える庭園の木々が見える贅沢な景観を楽しめる。そして両側には2つのオフィス棟が面している。オフィス棟は緑の花崗岩と白い石灰岩が入った水磨きコンクリートで覆われている。オフィス棟内には柔和で落ち着いた白が配され、新大使館の基調色である緑に呼応する。

 アトリウムの鋭角なコーナーには、大きい開放的な階段がある。背景の乳白色の二面ガラスは、新庁舎の南側ファサード唯一の開口部である。階段は金属製の中央桁に木製段板が個々に設置されている。階段は吹き抜けに面して4段に重なり合った片廊下を結び、片廊下は各階で部課に通じる中廊下へとつながる。

 オフィス設備は完全な可動式である。職場空間は下階と上階、南側と北側、西側と東側とで異なる。ホールの白い雰囲気から片廊下そして各階の中廊下へと進むにつれて、廊下の色(黄、緑、赤、青)が次第に際立つ。廊下は壁に覆われた南側と透明なガラス張りの北側とで、意図的に非対称に配色され、庭園の見え方にバリエーションを与えている。

 最大限に快適な職場環境をつくるため、大使館は多くの設備を「住人」に提供している。各階の廊下には、快適で実用的な現代デザインを代表する家具が配置され、交流スペースである吹き抜けの利用を促す。最下階のカフェテリアは庭園のテラスへと通じる。

 建築プロジェクトのスタッフと大使館文化部は、新庁舎の主要な場所に芸術作品を設置するように提案した。そうすることで新大使館の表情が、来訪者の目にも、職員の目にも、さらに魅力を増すだろう。

報道発表資料

最終更新日 07/09/2016

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