光よりも速い! [fr]

 素粒子の一つ、ニュートリノは光よりも速く移動するかもしれない! リヨン原子核物理学研究所の国立科学研究センター研究員、国際共同実験OPERAの責任者であるダリオ・オティロ率いるフランスの科学者チームによる測定で明らかになりました。

 ジュネーヴ近郊にあるヨーロッパ原子核研究機構(CERN)から発射されたニュートリノが、730km離れたイタリアのグラン・サッソ地下実験所で検出されました。ニュートリノは大きな意味を持つ差をつけて到着し、光よりも速く移動する結果となりました。データが確認されれば、その影響は計り知れず、まったく新しい理論的展望を開くことになるかもしれません。

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グラン・サッソ実験所のダリオ・オティロ
© CNRS Photothèque/IPNL/ILLE Bernard

 アルベルト・アインシュタインの相対性理論に基づいて、光速はこれまで常に越えられない壁とみなされてきました。この理論は物理学の柱の一つで、その方程式「E=MC²」はだれもが知っています。しかしながらリヨン原子核物理学研究所(IPNL)で活動する国立科学研究センター(CNRS)の研究者たちは、光よりも速く移動する素粒子ニュートリノの存在を発見しました。

 この驚くべき成果は、ダリオ・オティロと彼の研究チームが3年間にわたり超高精度測定および複合分析を進めた末に発表されました。研究者たちはグラン・サッソ実験所(イタリア中部アブルッツォ州)で、国際共同実験OPERAの装置で研究しています。装置ではCERNの粒子加速器を用いてニュートリノを発射します。ほとんど質量を持たず、電荷を持たない素粒子ニュートリノは、730km離れたグラン・サッソ実験所に到達し、巨大な検出器で捉えられました。

 秒速29万9,792kmの光は、この距離を2.4ミリ秒(1000分の2.4秒)で進みます。2006年に始まったOPERA実験では、グラン・サッソに光よりも60ナノ秒(1億分の6秒)早く到着するニュートリノを測定できました。ニュートリノは730kmの距離を、同じ距離を進む光より20m先行して走破します。

 ダリオ・オティロはCNRSのプレスリリースで、「我々はCERNとグラン・サッソの間にナノ秒レベルで同期できる装置を設置し、両施設間の距離を誤差20センチ以内で測定した。これらの測定値は不確定性も統計誤差も極めて小さいので、我々は結果に高い信頼性を認めている。我々の測定値と他の実験による測定値との照合を強く望んでいる。なぜ速度超過のニュートリノを観測していると思われるのか説明できるデータが皆無だからだ」と説明しています。

 OPERA実験にはCNRSの4つの研究所――リヨン原子核物理学研究所(CNRS/クロード・ベルナール=リヨン第1大学)、ユベール・キュリアン学際的研究所(CNRS/ストラスブール大学)、線形加速器研究所(CNRS/パリ南第11大学)、アヌシー=ル=ヴュー素粒子物理学研究所(CNRS/サヴォワール大学)――が参加しています。

 CERNとCNRSにより発表された結果は、過去3年間に測定されたもので、ニュートリノの検出数は1万6,000個を超えます。誤差は10ナノ秒(1億分の1秒)以内です。しかしOPERA実験の研究者たちはこの結果を公開し、物理学界からの広範な検証を望みました。世界中の科学者たちは、どんな小さな欠陥も見逃さないように実験を精査し、同じ結果に至りました。ニュートリノは予測よりも早く到達し、光よりも速く移動したのです。

 ローマから120km南に位置するグラン・サッソ地下実験所は、素粒子物理学および宇宙研究のための同種の施設としては世界最大です。世界22カ国から集まった約750人の研究者が活動しています。

 現在、アメリカのMINOS実験施設の科学者たちが、OPERA実験の研究に反論を試みており、最初の結果を2012年に提供できる予定です。日本のT2K実験(東海・神岡間長基線ニュートリノ振動実験)のチームも追試を実施していますが、距離は300kmにとどまります。

 この重要な国際的実験は2009年から2011年にかけて実施され、200人近い物理学者が携わりました。高エネルギー物理学界にとって、この結果を他の測定、他の分析で確認することが今や重要です。理論家にとっては、真の普遍定数である超高速を明日の素粒子物理学研究に組み入れる時が訪れたのかもしれません。

参照ホームページ
- フランス国立科学研究センター
- ヨーロッパ原子核研究機構

最終更新日 21/11/2011

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