フランスの家族政策

2005年10月

1. 家族政策のモデルと目標

 家族政策の目標は、子どもならびに家族の再認識、子育て費用の補償、出生率、所得再分配、貧困対策などの広範にわたる。ヨーロッパ連合(EU)の多くの加盟国は、個人の選択に属する問題という考えから、厳密な意味での家族政策を持たない。多くの場合、家族政策は貧困家族に対する援助政策にとどまる(オランダ、イギリス、アイルランド)。反対に、フランスの家族政策はこうした目標全体の達成をめざすもので、それゆえに野心的で複雑な性格を帯びている。

 出生率向上の目標は、出生を促進する方法で組み込まれている。例えば、フランスの出生率(1.8から1.9)はヨーロッパの平均値を上回っているが、子どもを何人欲しいかという質問に対するフランス人の回答は3人弱である。そこで、子ども1人を出産する際に発生する制約を抑えて、このフランス人の希望に応えることが家族政策の目標となる。また、フランスでは世代再生産が確保されていないが、子どもが3人いる家族の数が倍増すれば可能になる。

2. 歴史:フランスの家族政策の推移

 最初の公的措置は両世界大戦間にさかのぼるが(1938年政令法による家族手当)、フランスの家族政策が本格的に実施されたのは第2次世界大戦後である。1946年予算法による家族係数の創設に続いて、1946年法で社会保障の家族部門が給付する4つの手当(家族手当、単一給手当、産前手当、出産手当)が創設された。1950年、社会保障の歳出の40%が家族部門に関連するものだった。

 1960年代から1990年代まで、新しい手当がしばしば受給要件と所得要件を伴う形で創設された。家事従事母親手当、住宅手当、特別教育手当、単親手当、新学期手当などである。

 1994年、首相が議長を務める年次家族会議の開催が「ヴェイユ」法で規定された。以来、この会議は年1回、家族問題の主要関係者と協議し、家族政策の方針を発表する場になっている。

3. フランス家族政策の指標、手段、構造

 2005年、フランスは家族援助に年間約665億ユーロを拠出する一方、税制優遇措置も講じている。この支出額の内訳は極めて多様である。
- 家族給付に210億ユーロ
- さまざまな社会的援助に390億ユーロ
- 年金に関する特典に65億ユーロ

 家族政策に関する整合性ある統計を示すことは極めて難しい。というのも、家族政策は極めて漠然としているからである。条件を付けなければ、すべての公共政策が家族援助の要素を含み得る(例えば、多人数家族を対象とする割引カード)。

 最後に、国会で社会保障財源法が採択される。2002年、家族部門は11億ユーロの黒字を計上した。経済情勢を考慮すると、2003年と2004年は収支均衡に近づくだろう。1994年から1998年までを除いて概ね黒字で、その残高は60年代以降、最も深刻な赤字部門(健康保険、老齢保険)の収支改善に利用されるケースが極めて多い。

家族政策の主要な手段

 家族給付は4つのカテゴリーに分類される。

1. いわゆる扶養手当で、子育て費を補うことが目的である

- 家族手当(第2子から支給)
- 家族補足手当(第3子から支給、所得要件あり)
- 新学期手当(所得要件あり)
- 乳幼児受け入れ手当(PAJE):この手当は基礎手当(妊娠7カ月目に出産手当約800ユーロ、子どもが3歳になるまで月額約160ユーロを支給)と、「自由選択」補足手当の「2階建て」になっている。

 この「自由選択」補足手当には2つのタイプがある。

  • 両親が保育所や保育アシスタントに子どもを預ける場合に支給される保育方法自由選択補足手当
  • どちらかの親が子育てのために職業活動を一時停止する場合に支給される就業自由選択補足手当

 このようにPAJEは女性に選択の自由を提供している。第1に、出産後に職業活動を停止するかどうか。第2に、保育方法を個人にするか集団にするかである。

2. 単親家族援助

- 単親手当(API)、填補手当
- 孤児養育を対象とする家族支援手当

3. 障害児・疾病児に対する援助

- 特別教育手当
- 親付き添い手当

家族に対するサービス
 このサービスは主に地方公共団体ならびに家族手当金庫(CAF)が財源を支出する集団保育(保育所)と、(健康保険が財源を支出する)障害児受け入れ施設である。

税制措置
 主だった措置として、所得税額を減額するための家族係数(推定60億ユーロ)や、さまざまな控除(例えば住居税)が実施されている。

年金特典
 この特典は年間100億ユーロと推定され、年金受給額の増額、保険期間の延長、早期退職の可能性(特に公務員の場合、子どもが3人いる女性は15年の保険料納付期間で年金受給資格を取得できる)などがある。

より総合的な援助
 住宅手当と社会的最低所得保障制度では、家族事情を(各手当ごとに異なる方法で)考慮している。

 家族政策の主要関係機関は次の通りである。
- 行政機関(社会保護省社会保障局)
- 社会保障、全国家族手当金庫、県家族手当金庫
- 家族援助に取り組む活動団体が加盟する全国家族協会連合(UNAF)。UNAFは1945年に設立され、法律でフランスの家族の代表権を有する唯一の組織。7,500団体と(全国1,500万家族のうち)100万家族が加盟する。UNAFはUDAF(県家族協会連合)ならびに8つの一般団体で構成される。家族手当保険料の0.1%がUNAFの財源にあてられる。
- 労働組合の中では、フランス・キリスト教労働者同盟(CFTC)が常に家族援助を「使命」としてきた(CFTCは全国家族手当金庫長を務めている)

4. 現況:フランス家族政策の方針

 2005年の家族会議は2つの目標があった。一つは、家族が家庭生活と職業生活をよりよく両立できるように援助すること。もう一つは、子どもがインターネットを利用しやすい環境を整備することである。

  • フランス・モデルの独創性:家族の自由選択

 家族の自由選択は、家族が家庭生活と職業生活をよりよく連動させる手段を持つことにつながる。2つの補足的な目標を達成する必要がある。各保育方法で空席数を大幅に増加させると同時に、保育費を大きく縮小することである。

ここ数年来、こうした状況下でいくつものイニシアチブが具体化された。

  • 乳幼児受け入れ手当(PAJE)が2003年に創設された。家族の選択にかかわらず、家族を経済的に支援する。出産手当や養子手当をはじめ、さまざまな保育方法の利用に対する経済的援助や、子育てのために職業活動を停止する親に3年間支給される手当などがある。
    幼年期の子どもを持つ家族の90%以上がこの措置の恩恵を受けている。PAJEによる援助は大きい。子ども1人を保育アシスタントに預けると、1家族に最高364ユーロが支給される。母親か父親のどちらかが産後3年間の休暇がとれるうえ、月額500ユーロ以上を受給し、3年後に同じ雇用主の下で復職が保証されている。
  • 保育アシスタントの職務遂行に便宜を図る一方、親に安心を与えるとともに、保育アシスタントの数を大幅に増やすため、政府は保育アシスタントの身分規定を改正した(2005年6月16日法)。
  • 政府は児童の受け入れ数を増やすため、野心的な保育所計画に着手した。2002年来、新たに2万6,000席が創設された。2005年から2008年にかけて新たに3万1,000席が創設されるほか、2005年6月に首相が施政方針演説で1万5,000席の追加を発表した。合計で7万2,000席が2002年から2008年までに創設される予定で、3分の1近く増えることになる。

 国と全国家族手当金庫(CNAF)は昨年7月、2005年-2008年にCNAFの社会活動資金を30%以上引き上げることを盛り込んだ目標・運営協定を結んだ。国は24億ユーロを超える追加予算を計上した。企業もしくは企業間による保育所の設立を促進するため、行政や財政に関する大幅な規制緩和が実施された。

  • 未熟児を持つ親や、養子縁組を希望する親に対する援助を強化する措置も講じられた。未熟児の母親は、その特別な事情を考慮し、法律で有給出産休暇が延長される。
  • 2006年初めにフランス養子縁組協会が、親に対する手続き上の便宜を図るために設置される。政府は家族の負担を考慮して、2005年8月1日から養子手当を830ユーロから1660ユーロに倍増した。

最終更新日 14/12/2012

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